2018年5月16日
東京高等検察庁
検事長 稲田 伸夫 殿
浜松 袴田巌さんを救う市民の会
共同代表 寺澤 暢紘
6月11日に、袴田巖さんの裁判の決定が出されます。
検事長殿には、袴田さんの裁判のやり直しが速やかに行われますようご尽力下さいますようお願い申し上げます。
即時抗告審では、「白半袖シャツの右肩の血痕が、袴田さんのDNA型と一致しない」という鑑定結果が信用できるかどうかが争われてきました。
然るに、この血痕が袴田さんのものかどうか・・事件から48年経って、私達の前に現れた袴田さんの腕には、この争われている血痕の傷だと認定されている傷が、まだ残っていたのです。それが写真の傷です。私達は、この傷を見た時、この傷から出た血が白半袖シャツの右肩の損傷部分についたという認定が、明らかに誤っているとわかりました。そして、袴田さんが生きて帰って来られたことによって知ることができたこの事実を申し上げずにはいられません。
写真でわかる通り、袴田さんの傷は、横に走る1つの傷であり、白半袖シャツの損傷は縦に2つです。位置も、形も数も一致していません。しかも、袴田さんが、このシャツを着て、この腕の傷を負ったなら、受傷後、このシャツを脱ぐまでの間に出血した血が、袖に付いていなければなりません。それは、2つの損傷部分とは違う位置にです。なぜなら、袴田さんの傷とシャツの損傷の位置が違うからです。袴田さんの腕の傷から出た血が、この2つの損傷部分だけに全て滲み込むことはありえません。偶然でも起こり得ません。
私達が、この写真を提出することは、非常識に思われるかもしれません。しかし、袴田さんが、死刑の執行の恐怖に怯え、生き続けて来られた48年という年月を思う時、袴田さんが生き続けて証明している、この明らかな無実の証拠を無駄にしたくはありません。
確定死刑判決の事実認定そのものが誤っており、袴田さんのDNA型とシャツの血痕のDNA型が違っていたのは当然のことであり、もはやDNA鑑定の実験の手法は問題にはできません。再審開始は当然のことと考えます。
確定死刑判決の事実認定に合理的疑いがあることが明確である以上、検察官の良心に則った正義を示して下さいますようお願い申し上げます。
一日でも早く、袴田さんを死刑の恐怖から解放してくださいますよう、今できる最善を、どうか尽くして下さいますようお願い申し上げます。