「あんたの言ったとおりになったよ」(9/26 姉ひで子さんから弟巖さんへ)

無実の逮捕から58年、静岡地裁国井裁判長は『確定死刑囚・袴田巌』さんを無罪にし、10月8日検察が控訴を断念したので袴田さんの無罪が確定しました。

最高裁で死刑が確定し死刑囚となった巖さんは獄中で猛勉強をし、1981年第一次再審請求にあたり膨大な『意見書』を独力で書き上げました。

「第一審判決は誤判であり、私は無実である」「私血の叫び肌泡立つ今日この頃、無念の獄中から万感を抱きつつ衷心より意見を申し上げ、再審開始を求めます」

①『端布』は偽証であり、その発見経過に注目してほしい。(母ともは端布を見せられて「これは巖の荷物の中にあったものではない」と証言したが裁判所は信用できないと切り捨てた)  *母親の証言が巖さんを有罪にするために利用された。

②血染めの衣類(いわゆる5点の衣類)は私のものではない。

③吉村検事による取り調べ・調書作成は警察による不法不当をバックになされたもので任意性はない。

*当初から巖さんは検察による捏造を見抜いていました。

43年もの時間を浪費して、ようやく袴田さんの叫びが司法の壁を動かしました。

「判決に誤りがある」  ―反省しない検察は未だ袴田さんを犯人だと思っている―

無罪確定を受けて畝本直美検事総長は「判決には多くの疑問があり、到底承服できない」として無罪判決を受け入れようとはしません。再審公判で検察は袴田さんが無実だと知りながら死刑を求刑しました。死刑冤罪が過去のものではないことを検察の態度が示しました。控訴を断念した理由では「袴田さんが結果として相当な長期間法的不安定な状況に置かれてきたことを、刑事司法の一翼を担う検察として申し訳なく思う」と他人事のように述べています。

袴田さんの獄中生活は、明日殺されてしまうかもしれない恐怖と闘う毎日であってその主犯が検察官であるのに、悪いのは検察だけじゃないという子供じみた言い訳には怒りを覚えます。1日だけでも耐えられないことですが、袴田さんは33年間、1万2千日死の恐怖にさらされて心が壊れてしまったのです。

「巖を元に戻せとは言わないが、再審法改正に活かして欲しい」(ひで子さん)

取り返しのつかない誤りを犯した時、その原因究明と検証を行い、改革の道筋をつけなければまた同じ過ちを繰り返してしまいます。反省しない検察=法務省に任せることはできません。世論の力が必要で、再審法の改正の声が高まっている今がチャンスです。大川原化工機事件やプレサンス事件では今でも検察が冤罪を作り出しています。再審のルールを定めることを急がなければなりません。

同時に無実の人を死刑にしたかもしれない現実を前にして、日本の死刑制度はこのままで良いのでしょうか?世界では130ケ国以上が廃止、事実上廃止なのに、絞首刑という残虐な刑罰を日本は維持しています。国民的な議論が必要です。袴田事件を『中世なみ』と言われる日本の刑事司法を変える教訓にしなければなりません。

           (文:袴田さん支援クラブ・見守り隊 清水一人)