無実の袴田巖さんを速く無罪に!!

《検察は袴田巖さんを再び死刑にしようとしている》

3月13日、東京高裁で『裁判のやり直し』が決まり、晴れて袴田さんは無罪になるものと多くの人が思っていましたが、検察は7月になって『有罪立証』の方針を決め、再び袴田さんを刑務所に連れ戻し、死刑にしようとしています。

これまでに4回の公判が開かれましたが、検察は「袴田以外犯人はいない」ことだけを印象付けようと、57年前の資料をつなぎ合わせ、自分たちに都合の良い証拠だけで巧妙に作文を作り上げました。しかしながら、事件当時には生まれてもいなかった3人の検事が作った作文は確たる根拠もなく、全て想像に過ぎません。

警察が『5点の衣類』をねつ造して味噌タンクに隠したと疑われることに対しては「ウソがばれるリスクを冒してまで大規模なねつ造は考え難い」と結論付けていますが、これこそが検察官の無知を暴露しています。

袴田事件が起きたのは1966年(昭和41年)ですが、戦後静岡県では、二俣事件、幸浦事件、小島事件など強盗殺人事件でえん罪が多発し、幼女誘拐殺人事件の島田事件は(1989年無罪が確定)未だ裁判の途中でした。

それらのえん罪事件を引き起こしたのが『拷問王』と呼ばれた紅林麻雄と彼の部下たちであり、袴田事件の取り調べに加わっていたことが明らかになっています。

つまり当時の静岡県警では無実の人を逮捕し、拷問で自白させる手法が常態化していたことが見て取れます。これが『えん罪・袴田事件』の背景です。

《5点の衣類は犯行着衣でも袴田さんのものでもない》

1967年8月30日に2m四方の巨大味噌タンクから発見された『5点の衣類』が唯一の決め手になって袴田さんは死刑囚にされてしまいましたが、東京高裁の再審開始決定では「捜査員が捏造した可能性が極めて高い」と指摘されました。

5点の衣類は発見当初からおかしなことばかりで、はけないズボン、味噌漬けにされた衣類の色などが知られていますが、犯人が味噌タンクに入れた理由を考えれば疑問は解けます。なぜなら味噌は商品ですからいずれ出荷されます。必ず発見される場所に入れる行為は、隠すのではなく、むしろ発見されるために行ったと判断できるからです。しかも、味噌タンクから発見されたのは『5点の衣類』だけではありません。みそ会社の社名の入ったマッチ箱と絆創膏がズボンの右ポケットに入っていました。なぜ絆創膏がと思われるでしょうが、袴田さんは消火作業の最中に左手の中指をトタンのようなもので切って怪我をしています。『5点の衣類』だけでは袴田さんを犯人にすることはできないので、その所有者が工場従業員で、指などに怪我をしている人物であることを連想させなくてはなりません。もちろん警察は事件直後から袴田さんが指を切って治療していたことを知っています。

袴田さんがもし本当の犯人ならばわざわざ明らかな証拠を残すはずがなく、被害者と一緒に放火して燃やしてしまったり、工場の裏の海に捨てたでしょう。

一方、ねつ造した側は袴田さんのものだと類推出来て、また必ず発見される場所=間違って捨てられることがない場所に入れなければならなかったのです。

《私は犯人ではありません=獄中から生の声》

袴田さんは1981年に、第一次再審請求を静岡地裁に提出しました。1983年には獄中で猛勉強をして自ら書いた16枚の『意見書』は次のように述べられています。

「第一審判決は誤判であり、私は無実である」「はけないズボンは自分のものではなく、事実誤認である」「血染めの衣類は私の物ではない」

この時すでに獄中17年を経過してもなお再審に意欲を見せ、理路整然とそして魂を振り絞り「無念の獄中から万感を抱きつつ、再審開始決定を求めます。」と袴田さんは訴えていました。(1983年2月)

このように心から再審開始を願っていた袴田巖さんは今再審公判の場にいません。死刑囚としての想像を絶する苛酷な拘留によって、精神が壊され、普通の会話が出来なくなってしまいました。

40年前にこの意見書が裁判官によって取り上げられていれば、信じがたいほどに残酷なえん罪を止めることができたかもしれません。しかし袴田さんの訴えが認められたのは、それから30年以上も経った2014年の静岡地裁の再審開始決定であり、今年3月の東京高裁の決定でありました。

どんなに謝罪しても、愛する家族と引き裂かれ人生を奪われた過ちは取り返すことはできませんが、袴田さんがせめて残された人生を穏やかにそして晴れやかに生きることを望むのが人としての心情ではないでしょうか。

 

検察は身内の強硬意見に突き動かされ、袴田さんに死刑を求刑しようとしていますが、検察の非道を非難する市民の声はこうした検察の姿勢を変えることができます。

年が明ければ、袴田巖さんは88歳に、姉のひで子さんは91歳になります。残された時は本当に少なくなっています。一刻も早く、速やかに無罪判決を勝ち取らなければなりません。

無実の袴田さんを応援してください。                                       (文責:清水)