9月26日、27日の両日、再審開始決定についての東京高裁即時抗告審でDNA型鑑定についての鑑定人尋問が行われた。再審開始決定の重要証拠であったシャツの血液が袴田さんのものではないという鑑定を出した本田筑波大教授と、検証実験でその鑑定を「不適切な方法」として反論批判していた鈴木大阪医大教授の両者への尋問が終了。その後に、弁護団が記者会見した。
会見では、弁護団の笹森弁護士が鑑定人尋問の結果を説明。
本田先生と鈴木先生は隣り合った席に座り、法曹三者からの質問を交互に受けた。
鈴木先生の検証実験は本田鑑定の追試をしたものがほとんどないことがわかった。例えば、繊細なDNA型鑑定をする前提の手続きとしては、的外れなやり方をとっていた。バイアルというチューブのようなものを使うのだが、全然形の違うものを使っていた。また、スピンバスケットという非常に小さな網のようなものに抽出液を流し込んでいるので、鈴木先生の方法では採取したい血液凝集塊がほとんどその網にひっかかって溶液中には入ってこない。その結果、忠実な追試にもなっていないし、あえて検出が困難になるような器具や手順を加えたために、DNA型を十分出すことができなかったことが明らかになった。
他方、弁護団では9月23日に本田先生の鑑定実験を再現しその一部始終をビデオ収録した。素人の学生と弁護士が全手続をやって8時間、ホンダ鑑定と同じようにDNA型が出た。鑑定人尋問の際にビデオ映像とパワーポイントで説明。裁判官も検察官も興味深げに見ていた。鈴木先生からの反論は特になかった。弁護側の検証実験の録画映像は、大島裁判長の判断で審理の資料ではなく、証拠として採用された。百聞は一見に如かず、鈴木検証実験はもはやホンダ鑑定を批判する力のないことが確認されたと言ってよい。マスコミに事前に飛び交った評価は180度転換して頂きたい。
本田先生は、検察官から厳しい質問をたくさん受けたが、すべて丁寧にきちんと答えていた。他方、鈴木先生は、わからないとか、その点は知識がないとか、論理的な説明に乏しかったことが印象的であった。手ごたえのない受け答えであった。
弁護団は、本田鑑定の結論が再確認されたとして、後は東京高裁が速やかに即時抗告を棄却するだけの状況となったと確信している。