東京ドームのミサに袴田さんを招待、来日したローマ教皇

「5万人のミサは荘厳、教皇の優しさと愛を感じました」
と秀子さん


11月25日、来日しているローマ教皇は、東京ドームでミサを開催。そこに袴田巌さん、秀子さんが招待されました。袴田さんには、四人の案内・警護がつく特別待遇でした。そこには袴田さんへのいたわりと教皇の愛を感じます。

教皇は死刑制度の廃止を訴えています。

死刑制度は人間の尊厳に対する攻撃。犯罪者が悔い改める可能性まで奪う必要はないとして、反対する立場を繰り返し示してきました。2015年に、複数の州で死刑制度が続くアメリカを訪れた際には、連邦議会ですべての国に対し死刑制度の廃止を呼びかけました。

昨年8月、「全世界で死刑が廃止されるために決意をもって取り組む」と宣言し、日本でのミサに「無実なのに未だ死刑囚」の袴田巌さんを招待、凛とした姿勢を示したのです。それは、半世紀にわたって再審無罪を求め続ける巌さんへの温かい応援であり、「えん罪による生命の犠牲を許さない、そしてその理由だけでも死刑廃止は正当化される」という強いメッセージです。日本国民のみならず、全世界の政府と市民にむけた意思の穏やかな表明です。

ローマ教皇といえば、かつて「王権神授説」の下で国王を任命した王の王たる権威を誇り、今また13億人を擁するクリスチャンの最高指導者です。

ミサ後に記者会見した西嶋勝彦弁護団長は「無罪を主張している袴田さんが招待されたことは、世界に発信される。再審開始に一歩近づけることができた」とその意義を強調しました。

フランシスコ教皇は、被爆地(長崎・広島)から全世界に「核兵器の廃絶」を訴えました。そして、環境の保護、生命の大切さ、寛容な社会の実現などをアピール。渾身の舌鋒は驚くほど鋭く、平和と人権の究極を訴えるメッセージでした。

「核兵器保有は倫理に反する」「戦争のための原子力利用は犯罪」から始まって、「軍備拡張競争は、途方もないテロ行為」とまで言ってのけました。そして教皇の目は、国家間の暴力行使だけではなく、国家による殺人、死刑制度、人権侵害にも向けられています。飢える人々、虐げられている人々に救いの手を差し伸べるのです。袴田巌さんの悲惨にも、原爆被災者などに対すると同等の慈しみを表現されました。